在留資格取消制度とは?
外国人が日本に在留するためには、在留資格をもって在留することが必要になります。日本国内で可能な活動についても、例えば、就労については在留資格の種類により可能なものと可能でないものの区分がされています。また、在留できる期間についても、永住等一部の在留資格を除き、在留許可の段階で定められています。在留資格取消制度は、既に外国人に許可されている在留資格について、特定の事由が生じた場合や特定の事由が判明した場合に、在留期間の途中であっても取消す制度です。在留資格が取消された場合は、その事由により30日以内の出国準備に必要な期間が与えられ、その期間に出国することが必要で出国しなかった場合は強制退去手続きに入ります。また、事由によっては準備が与えられず直ちに強制退去の手続きに入る場合もあります。強制退去手続きによるか自主的に出国するかはその後の日本への再入国の際の条件に大きく影響します。
予期しない在留資格の取消に遭遇しないためにも、在留資格取消制度の内容は理解しておく必要があります。
在留資格取消事由 ①直ちに強制退去となる場合
入管法は、その22条第1項に第1号から第10号までにわたり、在留資格取消制度を定めています。
そのうち第1号から第2号の事由に該当する場合が、直ちに強制退去手続きに入るケースです。
(1)1号「上陸拒否事由(入管法5条1項各号)があるにもかかわらず、偽りその他不正
の手段によって上陸許可を受けたこと」
具体的には、過去に退去強制された者で、未だ上陸拒否期間中にあるにも関わらず、その事実を隠し偽名等を使用して上陸許可を受けた場合です。
(2)2号「日本で行おうとする活動について、偽りその他不正の手段によって上陸許可を受けたこと」
具体的には、留学の在留資格で上陸許可を得たが、実際は専ら就労目的で上陸し、日本の学校等で教育を受ける予定のなかった場合です。
在留資格取消事由 ②30日以内の出国準備に必要な期間が与えられ、その期間に出国することを指示される場合
(1)3号「1号又は2号以外の場合で、虚偽の書類を提出して上陸許可を受けたこと」
具体的には、就労目的の在留許可申請にあたり、虚偽の書類を提出して上陸許可を得た場合などです。
(2)4号「偽りその他不正の手段によって、在留特別許可を受けたこと」
具体的には、日本人との婚姻を理由に在留特別許可を得たが、婚姻の実態がない場合などです。
(3)5号「別表第1の在留資格を有する外国人が、当該在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとしていること(正当な理由がある場合を除く)」
具体的には、留学の在留資格を有する外国人が中途退学し、その後新たな学校に行かず仕事をしながら在留していた場合などです。
(4)6号「別表第1の在留資格を有する外国人が、当該在留資格に係る活動を継続して3ヵ月以上行わないこと(正当な理由がある場合を除く)」
具体的には、就労の在留資格を有する外国人が、勤務先企業を退職し、その後3ヵ月以上就職する見込みのない状態で在留している場合などです。
ただ、退職の理由が勤務先の倒産等で失職し、その後就職活動を現在も継続している場合は、正当な理由があると判断される可能性もあります。
このような場合は、倒産の事実や就職活動をしていることの証明資料を準備する必要があります。
(5)7号「日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等として在留資格を有する外国人が、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないこと(正当な理由がある場合を除く)」
具体的には、配偶者と離婚・死別して配偶者の身分を失った後、6か月以上経過している場合です。これには婚姻の実態がない場合も含まれます。
ここでの正当な理由とは、例えば、離婚調停・離婚訴訟中の場合や配偶者からの暴力を理由にやむを得ず一時的に避難・保護が必要な場合などです。
通常このような事態になる前に、定住者等の身分系在留資格や技術・人文知識・国際業務等の就労系在留資格への変更手続きを行うことになります。
(6)8号「上陸許可又は在留特別許可を受けたこと等によって新たな中長期在留者となった外国人が、当該上陸許可を受けた日から90日以内に出入国管理在留管理庁長官に住居地の届出をしないこと(正当な理由がある場合を除く)」
具体的には、在留特別許可によって新たに日本人の配偶者等の在留資格を得たにもかかわらず、格段の理由もなくその取得日から90日以内に住所地の届出をしなかった場合などです。
(7)9号「中長期在留者が届け出た住所地から退去した場合、退去後90日以内に出入国管理在留管理庁長官に新住居地の届出をしないこと(正当な理由がある場合を除く)」
具体的には、転居したにもかかわらず、特段の理由もなく転居後90日以内に新住所地の届出をしなかった場合などです。
なお、(6)8号(7)号に掲げる正当な理由が、勤務先の倒産・派遣切り等により現住所からの退去を余儀なくされ経済的な理由から新たな住居地を定めていない場合や、治療のため病院に入院している等により本人が届けられない場合などでは在留取消しを行わない取り扱いがされています。
(8)「中長期在留者が、出入国管理在留管理庁長官に虚偽の住居地を届出たこと」
在留資格取消手続きのポイント
①在留資格を取消すには、入管法22条の4第2項から第9項にその手続きが定められています。
在留資格の取消の対象となる事実が判明した後、法務大臣はその取り消しを行うためには、入国審査官にその外国人の意見を聴取させなければなりません。
②意見聴取通知書を受け取った外国人は、通知書に指定された期日に指定された場所に出頭しなければなりません。
理由なく出頭しない場合に当局は、意見聴取をすることなしに直ちに在留資格を取り消すことができます。
意見聴取の際その外国人は、入国審査官に質問したり証拠を提出したりして、取消原因の存在しないことを主張立証する機会を得られます。
また、取消原因が存在すると確認された場合でも、その取消手続きを開始するかどうかについては法務大臣に裁量権があり、開始されない場合もあります。
その場合でも、在留期間更新申請の際に、在留資格該当性がない等の理由により更新の許可が認められない場合があります。
③意見聴取の結果、在留資格が取消される場合は、法務大臣から在留資格取消通知書が送達され30日以内の出国に必要な期間が指定されます。
この期間内に出国しない場合は、退去強制事由に該当するため、退去強制手続きに移行されます。
行政書士 Office Ueda
住所:東京都新宿区西落合3-10-1