上陸拒否事由とは?
日本に入国するための手続きを「上陸審査手続き」といいます。一般の上陸審査手続きには、査証(=ビザ)と旅券(=パスポート)が必要ですが、査証が免除されている国の外国人と査証が免除されていない国の外国人とではその手続きは異なります。いづれにしても、出入国する空港や港において、入国審査官に旅券と査証(免除国でない場合)を提示して上陸審査を受けます。入国審査官が上陸の条件に適合すると認めた場合は上陸許可を得ることができます。上陸の条件とは以下の4つを言います。①旅券及び査証が有効であること、②日本で行おうとする活動が申請した内容と偽りのものではなく、かつ、入管法に定める在留資格と上陸許可基準に適合すること(上陸許可基準はの定めのある在留資格はそれに適合しなくてはなりません)、③日本での滞在予定期間が、在留期間を定めた入管法の規定に適合すること、④上陸拒否事由に該当しないこと、となります。
なお、ビザという言葉は、正しくはここで言う「査証」を意味しますが、日本に来る外国人は在留資格のことをビザと呼ぶケースが大半です。ビザという場合はどちらを意味しているか注意が必要です。このH/Pのコラムのシリーズでは、分かり易くするため、在留資格に関することにつきビザと表現しています。
上陸拒否事由とは
上陸許可は法律上の要件を満たす場合は必ず許可することとなっているため、法律が明示している要件以外の条件の設定はされていません。
ただ、上陸審査で上陸のための条件に適合していることの主張立証責任は、入国しようとしている外国人側にあります。通常の場合は、有効な旅券と査証を入国審査官に提示すれば格段の立証は不要です。
しかし、入国審査官に上陸の4条件に抵触すると疑われたり、特別審理官の口頭審理に回されてしまうことがあります。
このような場合に、例えば、就労の目的で入国するときは、上陸のための条件を満たしていることを証明するための在留資格認定証明書を持参し提示すれば立証されたとされますが、万一に備え、空港に出迎えに来てくれている受け入れ機関の担当者の携帯番号を予め記録しておき、特別審理官にその担当者に電話をかけて確認してもらうなどの準備も必要になることがあります。
なお、実務上特別審理官に回された場合、その後入国を認められるケースはほとんどありません。誤って回されないように事前の準備が必要になります。
具体的な上陸拒否事由は出入国管理法第5条に定められています。これらは日本国に入国することが好ましくない外国人の類型とも言えます。
①保健衛生上の観点から入国を拒否される者
感染症の流行地域からの渡航者や、感染症の症状を示す人物は、日本への上陸を拒否される可能性があります。
②反社会性が強いと認められる者
麻薬・覚せい剤等に関与する者、売春に関与する者など反社会性の観点から上陸を拒否される可能性があります。
③日本国から退去強制をうけたこと
入管法24条により退去強制をうけた者等です。
④日本国の利益又は公安を害するおそれがあること
国内における公安の保持の観点から危険視される人物で、 テロリストや組織的犯罪者、国家への脅威を持つ人物などです。
⑤相互主義に基ずく場合
入国しようとしている外国人の属する国が、日本人に対してなんらかの理由をもって入国を拒否している場合、同様の理由でその外国人の上陸が拒否される可能性があります。
なお、再入国の場合は、上陸のための4つの条件のうち、旅券の有効性と上陸拒否事由に該当していないかのみが審査の対象になります。
それ以外の要件、例えば、再入国の段階で在留資格の該当性がないことが判明していても上陸許可はされますが、入管の在留ブラックリストに搭載されるため、次回在留資格更新申請の際には慎重に審査され更新不許可となる場合もあり得ます。
また、在留取消事由に該当している場合は所管入管に通達されるため、再入国後に立件される可能性は否定できません。特別永住者については、別途の取扱がされています。
上陸特別許可と上陸拒否の特例
(1)上陸特別許可
入管法の要件を満たさないことによって一切の上陸を認めないとすると人道上の観点から不合理な結果になることも想定されるため、入管法12条1項に法務大臣による上陸特別許可の制度が設けられています。
具体的には、①再入国の許可を受けているとき、②人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入ったものであるとき、③その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき、と定めています。
(2)上陸拒否の特例
入管法5条の2に、外国人に上陸拒否事由に該当する特定に事由があっても、法務省令(入管法施行規則)で定める場合で、法務大臣が相当と認めるときは、入国審査官が上陸許可の証印をできるとされています。
具体的に法務省令で定めているのは、
①外国人に上陸特別許可、在留資格変更許可、在留期間更新許可、永住許可、在留資格取得許可、再入国許可、在留特別許可を与えた場合、難民旅行証明書を交付した場合、これらに準ずる場合として法務大臣が認める場合であって、当該外国人が在留資格をもって在留している場合、
②外国人に在留資格認定証明書を交付した場合又は外国人が旅券に日本領事館の査証を受けた場合で、入管法5条1項の特定事由に該当することとなってから相当の期間が経過していることその他の特別の理由があると法務大臣が認める場合、とされています。
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