新宿 行政書士 経営・管理「合同会社の資本剰余金」と「経営管理ビザ」の出資要件

query_builder 2024/04/09
在留許可 経営・管理

新宿の企業さんからのご照会です。外国人の経営管理ビザ申請に関して、合同会社の出資金の多くを資本剰余金に留保することでビザ取得は可能かというご質問です。合同会社の資本剰余金は株式会社の資本準備金に相当し、資本準備金が資本金額の1/2を上限としているのに対し、合同会社の資本剰余金は上限がありません。 

従って新設時や増資時に資本金を抑制し資本剰余金として留保する方法があります。 

このような手段を取る理由として、法人住民税均等割や登録免許税の節税を目的としていると推測されますが、 合同会社の会計上の取扱として違法とはされていません。 

ただし、以下の点に留意が必要です。 

 

➀資本剰余金は決算書に記載表示されるものでそれ以外の方法で外部から確認することはできないこと 

②資本剰余金の額は資本金ではないので登記簿に変更後の資本金額が表示されないため増資されたことを外部から確認できないこと 


  以上の点から、出資された資金を会社資本として出資したと外部に証明するためには、➀に対しては決算時に貸借対照表に記載してあること②に対しては出資金を資本金として登記簿に変更登記をすることが必要となります。 

例えば、決算期前に増資のあったことを外部的に証明する手段は登記簿に変更登記をする以外方法がないことになります。


経営管理ビザの申請要件として、申請外国人が経営管理する予定の会社に500万円以上の出資金の現実の支払いが必要で、その資金が資本金として出資のあったことを証明する必要があります。 

資本剰余金は資本金とともに純資産を構成するものですが資本金そのものではなくその出資を外部的に確認できないため入管庁に資本金として出資したと認めてもらうことは困難です。 


 経営する会社が安定的に継続する見込みのある会社でないと形だけの経営管理ビザとなりやすい。経営管理ビザの要件が厳しいのは、日本での在留目的のためのみに経営管理ビザを取得しようとし、実際に出資する金額は減らしたいとする外国人が多くおり、彼らを排除するためでもあります。


 経営管理ビザの対象となる会社はその業種や規模は問われませんが、最近は小規模零細会社が多く合同会社を設立して経営管理ビザを申請するケースは増えています。

 小規模会社は会社実態があいまいになりやすいこと、会社信用力に問題があることから実際に安定的に継続発展する会社ばかりではありません。 そのため、経営管理ビザの許可にあたっては継続性に課題のある新設会社や合同会社などの小規模会社についてはその実態を詳細確認するため許可の難易度が上がっています。

 また会社設立時に許可されても通常1年後に来る更新時に会社実態を精査されビザ更新ができなくなるケースもあります。 


最近は会社の税金・社会保険料の支払い状況のチェックも厳しくなっています。 入管当局は、会社が税金や社会保険料を支払うことは当然と考え、その支払期限が守られているかの方を重視し詳細確認しています。従って、滞納はおろか1日の支払い遅延についても厳しくチェックされているのが現状です。その結果これらに端を発し経営管理ビザの認定や更新できないケースもあります。 


このことは、租税回避行為に対しても当局の眼は厳しくなっているということも意味します。  節税目的の諸対策については、仮にそれが合法であっても租税回避の意思が露骨な場合は国民として当然求められる納税者としての姿勢に疑問がもたれることを意味します。

 許認可はあくまで許認可権者の判断です。しかもその時1回の申請にとどまらず、将来の永住や帰化の申請にあっても過去の事実は入管当局に完全に記録されているため、当時の事情が再燃し問題となることは少なくありません。目先の小さな利益のために問題の本質を見誤らないよう留意しましょう。


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行政書士 Office Ueda

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