知らなくても不法就労助長罪になるの?

query_builder 2024/01/27
帰化申請 永住権 在留許可 配偶者ビザ 経営・管理

「そんなこと言ってもうちの外国人が不法就労なんて知らなかった、じゃすまないの」新宿の企業さんの質問の続きです。

不法就労に該当する外国人を就労させるとその事業主も不法就労助長罪(入管法73条の2)で処罰される可能性があります。

この罪は、故意に不法労働者を働かせた事業者だけでなく、「初めて外国人を雇ったけど不法就労なんてわからなかったし、ましてそれで罪になるなんて知らなかった」とか「外国人の就労期限の確認をついつい忘れて結果的に不法就労になっちゃった。悪気ないんだけど」といった事業者に対しても適用されます。


不法就労助長罪が適用される典型的なケースは以下の3つです。

在留期限が切れた人などの不法滞在者、既に退去強制されると確定している者を就労させた場合

②留学や短期滞在などの就労が認められていない在留資格の人を働かせた場合(ただし、あらかじめ「資格外活動許可」を得ている場合は除かれます。)

③「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得した人を単純労働で就労させるなど在留資格で許可された範囲を超えて働かせた場合

などです。


外国人が不法就労にあたることを知って雇用させた場合は、会社であれば代表取締役や採用担当役員などは処罰されます。また、会社ぐるみで継続的に不法就労の外国人を雇用していると、会社自体も処罰される可能性があります。

また、このような不法就労の外国人を、不法就労させる目的で繰り返し仲介あっせんすることを業としているブローカー、仲介業者、斡旋業者も処罰の対象になります。


それでは、外国人が不法就労にあたることを知らないで雇用した場合はどうなるのでしょうか。

在留カードに「就労不可」と明記されているビザは原則就労できません。例えば、資格外活動許可を得ていない留学ビザ、家族滞在ビザ、短期滞在ビザで就労させる場合などです。

また、在留期間が明記されているビザの取得者がその在留期限が切れている状態(オーバーステイ)で就労させる場合です。

更に、、有効なパスポートを持っていない人・ビザを取り消された人・出国準備期間を超えて日本に滞在する人・日本人の配偶者や永住者の配偶者が離婚や相手が死亡などによってビザを失ったにもかかわらず6か月以上経過しても日本に在留している人などなど、雇用主が確認を怠るなどして過失があると認められる場合はこの罪に処せられます。


この確認のために雇用主がまずやるべきことは、「在留カード」と「旅券(パスポート)」の内容の確認です。偽造の有無も確認しましょう。確認に自信がなければ国際関係を専門にする行政書士の支援を受けることをお勧めします。


就労させた外国人が不法就労だと分かった場合は、「解雇」と「入国管理局への出頭をうながす」ことが必要です。

前者については就業規則等の懲戒規定や労基法を踏まえた対応の視点も必要です。

後者の「出頭を促すこと」については雇用主に法的な義務はありません。ただし、当該外国人が自発的に入管に出頭することにより入管での処置が緩和される場合もありますので本人のためにも必要なことと思います。


(参考法令)

入管法73条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

  二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者

  三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者

 2項 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

  一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。

  二 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり第十九条第二項の許可を受けていないこと。

  三 当該外国人が第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで又は第八号のニから第八号の四までに掲げる者であること。





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